口腔の健康を図ることは、多くの全身の病気を防ぐことにつながることから、健康寿命を延ばしたいという国民的な課題に応えることができるとともに、健康経営的にも医療費の適正化に貢献します。すなわち、口腔の健康の訴求は全身の健康の第1歩となるのです。
一方唾液は、全身を表す鏡であり、口腔を外的要因から最前線で24時間防衛する最上位の生物科学的生体因子です。この唾液の機能を考慮することが、全身の健康を支える重要な要因であるにもかかわらず、唾液を介した健康維持の重要性は周知されておらず、国民への啓発や研究の推進はこれからです。そのため、「いい唾液の日」を制定し、普及啓発に努めているところです。
その「いい唾液の日」にちなんで、本研究会学術集会を開催します。特に、唾液の健康促進効果を科学的に明らかにし、臨床応用する一連の取り組みの推進や唾液健康産業を育成することで、国民の健康維持に向けた取り組みを飛躍的に進めることを目的としています。また、医療関係者、企業、行政、大学関係者、市民等が一堂に集い、お互いに研鑽を積みネットワークを構築していただく機会としても意義があると考えております。
本年は、特別講演に、日本歯科大学 菊谷武教授をお招きして高齢者の歯科医療と唾液について、臨床的観点からご講演いただきます。高齢者における唾液の意義を再考できる貴重な機会となることは疑いありません。シンポジウムは、国民皆歯科健診を取り上げ厚労省から政策的な現状をお聞きするとともに、神奈川歯科大学口腔衛生学分野 山本龍生教授に歯科疾患のスクリーニングにおける唾液検査の意義について紹介していただきます。また、唾液検査は簡単というこれまでの概念をもう一度再考し、唾液検査の精度管理の重要性と本研究会における認定制度の紹介を神奈川歯科大学教育企画部 猿田樹理教授(認定制度企画運営委員会委員長・理事)からしていただきます。フォーラムとしては、地元歯科医師会とのコラボで唾液を語りたいと思います。ランチョンセミナーは、唾液のメタボローム解析による最新の情報提供と今後の展望について、この分野の世界的第一人者の慶應義塾大学大学院 杉本昌弘教授(本法人理事)の講演が実現できました。教育セミナーは、助産師や看護師の皆さんに向けて一般財団法人日本助産評価機構との協調で開催をいたします。最後にポスター発表は、地元のビールを片手に討論をしていただきます。
以上のように多くのプログラムを準備していますが、日本唾液ケア研究会はまだ発足2年目であり、まだまだ財務状況が盤石ではありません。多くの方の参加を得ること、そして多くの企業の皆様にご支援を頂かねばなりません。
どうぞ、唾液学の進歩と唾液による健康効果の普及にお力をおかりしたく、何卒ご協力を衷心よりご協力をお願い致します。
大会長 槻木 恵一
神奈川歯科大学 環境病理学分野 教授
人生の最終段階における唾液と口腔機能
日本歯科大学教授・口腔リハビリテーション多摩クリニック院長 菊谷 武 先生
加齢に伴う唾液分泌量の変化は、う蝕や歯周疾患、粘膜疾患の発症や重症化と関連する。さらに、咀嚼機能を支え、味覚を支える唾液の役割は、高齢者の生活の質(QOL)に直接関与する。
生きるためにそして人生を豊かにするために必要な水と言える。一方で、高齢者のステージによっては、唾液は違った側面を持ってくる。例えば神経変性疾患や筋疾患に罹患した高齢者では、嚥下機能の低下から、唾液の口腔内の処理や嚥下が困難になり、唾液と1日中格闘することになる。まさに、忌み嫌われる存在となる。終末期に近づいた高齢者においては、水分摂取量の低下から、唾液の分泌量は極端に少なくなり、粘膜は極度の乾燥状態となり、容易に出血するようになる。また、カンジダ症の発症を招くなど、口腔環境は一気に悪化する。口腔乾燥が著しくなった高齢者に対する丁寧な口腔ケアは、しゃべる機能を取り戻させ、摂食機能の回復にも役立つ。さらに、その時が近づいてきた時、唾液誤嚥をきっかけに、むせや呼吸困難感が発症することから、頻回の吸引を要するようになる。これを回避するために、あえて、水分量を絞り脱水状態を作ることも多い。
高齢者がその機能を徐々に低下させる中、唾液は、さまざまに、その人の生活に影響を与えてくる。人生を最終章において、良好な唾液のコントロールは、QOLの維持に役立つことになる。
国民の健康増進を唾液から考える 特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会(理事長:槻木 恵一:神奈川歯科大学教授)は、11月28日を「いい唾液の日」に申請し2021年8月より記念日として認定されています。
「いい唾液の日」は、日付の11と28で「いい(11)つば(28)」と読む語呂合わせから決定しており、この制定をきっかけに多くの人に「唾液」の健康効果を周知するとともに、全身の健康増進を心がけてもらうことや、唾液学・唾液検査学の推進を目的としています。
2023年「いい唾液の日」では昨年に引き続き、唾液に関連した国民の健康を支える研究者と唾液医療を推進する歯科衛生士・栄養士の功績を称えて表彰を行います。
プレスリリースはこちらから<表彰者紹介>
●表彰者 井上 和 ぶっちゃけ K's seminar主宰 歯科衛生士
●推薦者 坂本 紗有見 銀座並木通りさゆみ矯正歯科クリニック81院長
●表彰者 髙木グループ
髙木 直美 歯科衛生士 beside-U合同会社 主宰
髙木 悠里 管理栄養士
【唾液関連優秀論文表彰】
<優秀論文・表彰者紹介>
●表彰者 石川 恵生 山形大学医学部歯科口腔外科 講師
●推薦者 上野 義之 山形大学医学部長
●表彰者 高木 幸則 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔診断情報科学分野 准教授
●推薦者 村田 比呂司 長崎大学歯学部長
●表彰者 高 靖 九州大学大学院口腔常態制御学講座口腔細胞工学分野 助教
●推薦者 西村 英紀 九州大学大学院歯学研究院長
●表彰者 戸田(徳山) 麗子 鶴見大学歯学部口腔内科学講座 学内講師
●推薦者 大久保 力廣 鶴見大学歯学部長
【理事長奨励賞】
<表彰者紹介>
●表彰者 嶋﨑 義浩 愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座 教授
●推薦者 本田 雅規 愛知学院大学歯学部長
●表彰者 山田 蘭子 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 口腔・顎・顔面機能再生制御学講座 咬合・有床義歯補綴学分野 大学院生
●推薦者 大原 直也 岡山大学歯学部長
国民皆歯科健診は、口腔の健康から全身の健康を維持向上させる国民の健康の基盤となる政策と考えられる。日本唾液ケア研究会でも、いち早く、国民皆歯科健診について、意見の表明および意見の公募を行っている(https://z1bq0.hp.peraichi.com/)。特に健診との関連で唾液検査は有用なツールになることが考えられ、唾液検査に注目が当たることが予想される。一方で、唾液検査は簡便と言いながら、血液とは違い環境要因の影響を受けて成分が変動する検体であることから、その取扱いには注意が必要である。そこで、本シンポジウムでは、国民皆歯科健診の意義と唾液検査の未来について検討を行う。
シンポジウム抄録のダウンロードはこちらから
国民皆歯科健診への日本唾液ケア研究会の見解および意見募集サイトはこちらから
世界一の人体解剖標本館の見学
カラーアトラスオブアナトミーは、世界の医学部や歯学部などで解剖の教科書として採用されている高名な医学書です。その執筆者である横地千仭神奈川歯科大学名誉教授が、精魂込めて作製した標本が掲載されており、世界的価値が認められています。神奈川歯科大学100周年記念館には、カラーアトラスに掲載の標本が展示されています。世界一といっても過言ではない貴重な標本館を本学術集会に参加の皆様に特別開館いたします。ぜひ、この機会にご覧ください。
選択研修とは、以下の条件1~5をすべて満たすものとされており、本会開催の内容は準拠しています。また、当法人は日本助産評価機構の賛助会員となっております。
横須賀中央駅下車、東口徒歩10分
JR線利用の場合横須賀駅下車、京浜急行バス利用
(1)番のりば…「衣笠駅」行き等
(2)番のりば…「三崎東岡」行き等
(3)番のりば…「観音崎」「堀内」行き等
「大滝町」下車(バス所要時間約5分)徒歩5分
横須賀中央駅を経由する路線にご乗車ください。(約5分おきに運行)